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固定残業代を就業規則で導入する方へ

記事更新日:2024年5月21日

残業時間や残業代は多くの企業で労務管理上の課題となっていますが、この残業代を毎月固定金額で支払っていくという手段が固定残業代(定額残業代)です。

以前に比べて固定残業代は、導入する企業が増えたことで、会社、労働者双方に対して認知度も高くなってきているように感じます。

しかし、導入する企業が増加することに伴い、間違った設計・運用をしているケースも増えており、トラブルも比例して増えているのも事実です。

このページでは、固定残業代制度を法的に問題なく活用するためのポイントと注意点についてご説明いたします。

目次

  • どうすれば導入できるか?導入の要件について
  • 固定残業代のよくある間違ったやり方
  • 固定残業代が認められなかった場合のリスク
  • 固定残業代の導入の手順
  • 導入後の運用のポイント
  • 導入の費用、スケジュール
  • 固定残業代の導入について相談のご案内

どうすれば導入できるか?導入の要件について

固定残業代を導入するには、以下の要件を満たす必要があります。

  1. 固定残業代が、それ以外の賃金と、明確に区分されていること
  2. 固定残業代に、何時間分の残業代が含まれているのかが、明確に定められていること
  3. 実際の残業時間(時間外労働)が、固定残業代で定めた時間を超えた場合には、別途割増賃金を加算して支給すること

おおまかにいえば、これらのポイントを満たせば固定残業代制度は導入することができます。

当たり前のことといえば、当たり前なのですが、誤った解釈でこの3つの要件をクリアせずに、導入・運用がなされているケースもあります。

それでは要件を詳しくみていきましょう。

まず、1については、固定残業代と基本給や他の手当と明確に区別できるようにしておく必要があります。

「基本給に30時間分の残業手当が含まれる」といったアバウトなやりかたは認められません。

 

(NG例)基本給 40万円(30時間分の残業代込)

 このようなパターンです。

 

このパターンが、なぜダメなのかといえば、基本給と残業手当が明確に区分されていないから、というのが理由です。ここは明確に区別しましょう。

 

次に、2については、固定残業代の金額を基本給などの他の賃金と分けるだけではなく、その分けた金額が何時間分の残業代であるのかを明確な計算根拠をもとに定めておく必要があります。

 

(NG例)基本給25万円、固定残業代15万円

 このようなパターンです。

区別したからといって、「15万円を固定残業代とする」とだけ定めた場合にはこの15万円の固定残業代が何時間分の残業手当なのかがよくわかりません。

また、残業と一口にいっても、割増賃金としての割増率が異なるため、何の時間外労働の何時間分なのかを明確にする必要があります。

<代表的な割増賃金の割増率>

  • 法定時間外労働      25%
  • 深夜労働         25%
  • 深夜労働+法定時間外労働 50%
  • 法定休日労働       35%

加えて、残業には健康面を考慮し、36協定では原則1ヶ月45時間の限度基準というものがあります

時間外・休日労働に関わる協定届(36協定)においても、この限度時間を基準に作成しますので、固定残業代の設定時間も45時間に収めておくべきでしょう。

その他にも、社員と個別に結ぶ労働契約書や毎月支給する給与明細書にも明記しておくことや、手当の名称は一目で残業代とわかるものにする、といった注意点があげられます。

 

最後の要件として、3についても当然厳守する必要があります。固定残業代を導入しても、労働時間の管理は必要です。

固定残業代で設定時間を超えた人には毎月超過分の残業代を加算して支給する必要があるため、毎月の勤怠管理を完璧に行う必要があります。

中でも注意したいのが、割増率の違う残業の取扱いです。

例えば、固定残業代の定めを「時間外労働として20時間分」と設定したとします。

そして、実際の1ヶ月の労働時間の集計が以下となりました。

  • 時間外労働 22時間
  • 深夜労働   5時間

この場合、2時間分の時間外労働と5時間分の深夜割増賃金の加算支給が必要になります。

この不足額の処理がきちんとできていないと、固定残業代自体が否認されてしまう傾向にあります。

勤怠管理と給与計算が万全ではない会社は規程を作成したから大丈夫!と安心せずに実際の勤怠管理と給与計算の事務処理・オペレーションを見直すことをお勧め致します。

固定残業代のよくある間違ったやり方

固定残業代の要件をみたところで、次に弊所がよく見かける間違ったやりかたを以下の通りご紹介させて頂きます。

  1. 基本給に残業代を含めているが金額をわけてはいない
  2. 営業手当などの手当を残業手当とみなしているが就業規則は特にない
  3. 適当に基本給と残業手当を分けているが計算はしたこともない
  4. 就業規則には規定があるのに、給与明細では何もわかれていない
  5. 固定残業代の制度は就業規則で規定したが労働時間は管理していない
  6. 労働時間の記録はあるが、その通りに不足額を支払っていない

もし、あなたの会社で上記の項目に該当することがあれば、労働者とトラブルになった場合に会社が負ける可能性が高くなりますので、早急な改善をおすすめいたします。

固定残業代が認められなかった場合のリスク

では、もし万が一労働者とトラブルになり、裁判などで固定残業代が認められなかった場合にはどんなリスクがあるのでしょうか?

固定残業代が、認められず無効となれば今まで支給していた固定残業代は残業代とはみなされず、残業代は未払いとなってしまい会社には残業代の支払い義務が発生するというリスクがあります。

例えば、社員Aさんに、月額で合計30万円の給与を基本給25万円、固定残業代5万円として支給していたとします。

その後、何らかの不備により、固定残業代が認められず無効となってしまうと、会社としては既に払ったつもりになっている固定残業代の5万円分も残業代ではなく基本給としてみなされ、全く残業代を支払っていないことになります。

この時にさらに金額を大きくする要因として、本来は25万円をもとに残業代を計算するところが、30万円をもとに残業代を計算されてしまうことにあります。

※1時間あたりの残業単価が増加するという皮肉な結果を招きます。

このように、固定残業代は使い方を間違えると、会社の全く意図しない結果を生むリスクを抱えた給与制度になります。

固定残業代の導入の手順

固定残業代を導入したいと考える会社の要望をお聞きすると「総支給額は変えずにうまく導入したい」というパターンが非常に多いのが実態です。

このような場合には、労働条件の不利益変更になるため、導入には以下の手順で進めることとなります。

社員の残業時間を集計・分析し設定時間を検討する

固定残業代の導入には社員の皆さんの実際の残業時間がどの程度であるかを把握することから始まります。

新制度の総支給額を昇給するか検討し、人件費変動のシミュレーションをする

固定残業代の設定時間、新制度の総支給額といった要素を検討し制度導入後の人件費を試算します。

設定時間と総支給額は社員の不満やモチベーションを下げることにもつながるため、慎重な検討が必要です。

就業規則や賃金規程を整備する

会社側で検討した内容を明文化し、就業規則や労働契約書に落とし込んでいきます。

労働者と個別の同意を得た上で制度を導入する

単純に固定残業代を上乗せするパターン以外では、労働条件の不利益変更となり社員と個別の同意を得る必要があります。

よって、社員の同意が得られなければ再度制度の中身を調整する必要に迫られます。

導入後の運用のポイント

固定残業代制度を導入後に制度をうまく運用するためのポイントは、次の2つです。

  1. 労働時間、勤怠管理の徹底
  2. ミスのない給与計算

やはり、社員の労働時間をしっかりと記録し、労働時間に応じて支給するという極めて基本的な原則が大事になります。

しかし、思いのほか残業時間を正確に集計すること、残業代を正確に計算することは複雑で難しく、間違っているつもりはないのに間違っているケースが非常に多いのが中小企業の実態です。

弊所でも、新規のクライアントの初回相談で、就業規則は社労士の先生に頼んで作ってもらって、内容もしっかりしたものがあるにも関わらず、経営側・社員側ともにその内容を理解しておらず、まったく運用ができていないケースを何度も見てきました。

また、弊所の実際のサポート事例でよくみられるパターンとして、制度導入前は労働時間管理や給与計算がアバウトであったり、アナログで手間がかかっていたりすることがあります。

このような場合は、固定残業代を導入することをきっかけとして、ぜひ労働時間管理や給与計算をIT化することをオススメいたします。

弊所では、IT化を実現するために、どんなツールやサービスを選ぶ段階から一緒になって取り組み、導入を支援しております。

加えて、固定残業代の制度導入後にミスのない給与計算を頼みたいというご要望も多く、制度導入を機に弊所に給与計算のアウトソーシングを依頼される企業様も多くなっております。

固定残業代制度を作るだけではなく、作ってきちんと運用し、本当の意味で会社のリスクを排除しましょう。

 

固定残業代を導入するためのサービスとして、弊所では就業規則・賃金制度コンサルティングをご用意しております。

固定残業代は労働者にとって不満のもとになる!?

さて、ここまで固定残業代制度を法的に問題なく、導入し運用していく方法についてご案内をさせて頂きました。

ここでは、法的な面以外にも目を向けてみたいと思います。

2019年4月より「働き方改革関連法」が施行されてからというもの、世間では徐々に長時間労働に対する目が厳しくなってきています。

その影響もあり、労働者の間でも、特に若手社員では、長時間労働・つまり残業時間の多い会社が嫌がられ、不人気となってきています。

また、コロナという特殊な状況を経て、労働者の働き方や働く意識も変化してきており、「コスパ」が以前にも増して重要視されるようになってきています。

これらの社会情勢の変化、採用マーケットでの空前の売り手市場の状況などもあり、固定残業代のイメージが悪くなってきています。

例えば、月45時間の固定残業代を導入している求人をみた若手社員からすると、次のような「悪い」イメージを持っています。

  • 月に45時間も固定残業代の設定があるなんて、毎月残業時間が多い会社なんだ。応募するのはやめておこう。
  • 残業をしても追加で残業代はでない。残業代が込み込みなんて、嫌だ。
  • 固定残業代を導入している会社はブラック企業だとどこかのネットの記事で目にしたことがあるので止めておこう。

法令上、問題のない固定残業代制度を導入していたとしても、最近ではこういったイメージを持つ若手が多くなってきています。

求人はイメージ勝負です。求職者に良いイメージを持って応募の手を挙げてもらう必要があります。そういった意味では、設定時間が多いほど、不利になります。

また、「コスパ」に敏感になってきている労働者の感情からすると、設定時間だけではなく、そもそもの給与水準も大きな影響があります。

(A社)基本給40万+固定残業代15万=合計55万

(B社)基本給18万+固定残業代15万=合計33万

上記のような2社があったとして、同じように残業時間が発生したとしても、A社ではそもそもの給与水準が高いため「固定残業代」自体はあまり問題になりません。

逆に、B社では給与水準(基本給)が低いため、求人でも苦労し、仮に採用ができたとしても定着にも悪影響を及ぼすことになります。

このように、固定残業代は採用や定着に影響がでる要素にもなってきています。

昔は、この固定残業代を45時間で設定していたが、最近の状況をみて、30時間や20時間に設定時間を減らし、社員の満足度が向上した、というケースもあります。

残業代や賞与を含めた給与体系、社員の年収を今後どのように考えていくかは非常に大きなポイントになっていきます。

固定残業代の導入を含めた給与体系の整備についてご案内

ここまで、固定残業代制度は設計・運用面でそれぞれポイントがあり、実際に運用してしく方が難しいということをお話してきました。

ルールや制度を作ったとしても、その制度を適切に運用するためには、労働法に関する豊富な知識と現場で培った経験値が必須条件となります。

また、新しい制度を導入する際には、社員に説明するための資料を作り、これをもとに社員に説明し、納得を得るという作業が必要になります。

 
注意点が非常に多い、この固定残業代を導入するには、この制度に詳しい経験豊富な専門家に依頼するのが一番安心です。

どのような流れで進めていくべきか、また、その際にどのような資料を用意し社員に説明をすれば社員が納得しやすいのか、そのノウハウを持っています。

制度の導入によって、社員各人の給与がどのように変化するのかといった賃金のシミュレーション資料も作成し、会社・社員双方が誤解を生じないようなサポートをします。
 
残業代でお悩みや不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

当事務所では、経営者や人事担当者の方からのご相談を承っております。お電話とメール、ご都合のよい方法でご連絡ください。

また、御要望があれば、電話だけではなく、弊所へお越し頂ければ対面での相談にもご対応させて頂きます。

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