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記事更新日:2025年12月10日
企業型確定拠出年金(企業型DC)は老後資金のために毎月掛け金を拠出して積立を行う年金制度です。
このページでは、企業型DCにおける毎月の掛金の決め方について解説します。
掛金の上限は制度設計やプランによって変わってきます。
そのため、掛け金の設定方法を検討することが、どんな制度設計にするか?ということにもなります。
なお、掛け金の設定方法は企業型DCの規約に、掛金の拠出ルールを定めて、記載する事項となります。

企業型DCにおける毎月の掛け金には、拠出限度額というルールがあります。
企業型確定拠出年金の掛金は原則として企業側が決めることになりますが、掛け金を設計する際に上限のルールです。
この上限金額は、原則として月額55,000円という限度額があります。
また、原則としてのこの拠出限度額は、会社が企業年金(DB:確定給付企業年金、もしくは厚生年金基金)を併用している場合は「月額55,000円-DB等の他制度掛金相当額」が拠出限度額になります。
この「DB等の他制度掛金相当額」は加入している制度ごとに変わり、その金額は規約によって定められています。
例えば、一例として弊社のクライアント様で、既にある企業年金制度が導入されていました。
その加入済の企業年金の規約をみると、他制度掛金相当額が14,000円、というルールとなっていました。この事例の場合は、55,000円ー他制度掛金相当額は14,000円になるため、DCでの掛金上限は月額41,000円まで、ということになります。
企業型DCではこのように、制度を導入しようとするその会社がどんな制度を運用しているかによって、掛け金の拠出限度額が変わります。
まずはここを押さえておきましょう。

掛け金の上限ルールの次に押さえておきたいのが、制度として会社からの掛け金補助を行うかどうか?という点です。
企業型DCでは後で説明する社員自身の給与から掛け金を切り出す「選択制」のやり方、会社からの掛け金補助のみで掛け金を拠出するやり方、または、会社と社員自身の給与切り出しの両方を併用するやり方など様々な掛け金拠出方法があります。
まずは、シンプルに会社として掛け金の補助を行い拠出を行うかどうかを検討し、決定するといいでしょう。
会社からの掛け金補助を行うということは、中退共の掛け金拠出などと同じように、会社が毎月掛け金の負担を負うこととなります。
この場合の掛け金の設定ルールは以下のようになっています。
1、定額
最もシンプルな掛け金設定方法です。単純に加入対象者となる社員全員に、同じ金額の掛金を拠出します。
2、定率
定額と比較するとやや複雑ですが、柔軟な設定が可能です。例えば、給与などに対し、一定の比率を乗じた額を掛金とする方法や社内の職種や等級・ランクなどのテーブルを設定して、そのランクに応じた掛金を設定する方式です。
掛金の設定にあたっては、その根拠・ルールを明確にしておく必要があります。
ここで、毎月の掛け金の設定を検討した時に、いくらぐらいが妥当なのか?という悩みがでてきますが、これは2つの考え方があります。
1)会社の財務状況、キャッシュフローから考えて無理のない金額に設定する
まずは現実的なやり方です。加入者全体の掛け金負担を試算し、無理のない範囲で掛け金を設定する考え方です。
掛け金拠出の金額を現実的な水準に落とし込みますので、「将来いくらもらえるのか?」という点はあまり考慮しておりません。
2)将来いくらもらえるかをある程度想定し、逆算して設計する
例えば、25歳で入社した社員が60歳定年を迎えたときに、どのぐらいの退職金になるように掛け金を設定するか、という考え方です。
この場合は、試算するうえで「利回り」の想定をどの程度に置くかでかなり掛け金設定の金額が変わってきます。
想定利回りを高くすれば、当然運用成果も高いことを想定することになり、企業の掛金の拠出負担は少なくなります。
一方で、従業員にとっては、運用の負担が大きくなり、現実的ではないシミュレーションとなる場合もでてきます。
このあたりの利回りの想定値は、実際の運用商品の実績値をみて試算を行うといいでしょう。

企業型確定拠出年金制度で近年注目され、導入企業が増えているのがこの「選択制」の確定拠出年金です。
この「選択制」は従業員1人1人が企業型DCを行うかどうかを「選択」できる仕組みです。
このページでも解説してきたように、企業型確定拠出年金(企業型DC)は、会社が掛け金を負担し、従業員に掛金の拠出を行うこともできます。
一般的な退職金や年金制度の積み立てのイメージは、こちらの会社が掛け金を負担する方式かと思います。
しかし、当然この会社が掛け金を負担する方式は会社側としては当然掛け金負担が生じますので、なかなか導入できないという現実もあります。
そこで、企業型確定拠出年金のうち、企業の費用負担が少なく、また従業員自身の自分のライフプランに合わせて、自分の給料から掛け金を拠出するかどうかを任意で選択できるようにした制度がこの「選択制」確定拠出年金です。
従業員が掛金を拠出する場合には、企業型確定拠出年金と同様に扱い、拠出をしない場合には、通常の給与として支払います。
掛け金を拠出した場合は、その掛け金には税金や社会保険料がかからないことになり、結果として社会保険料や税金の負担が減る、ということになります。
従業員それぞれが、自由に老後にいくら溜めておきたいのか?といったことや、その人の資産状況やライフプランに合わせて、自分自身で毎月の掛金を設定できるという魅力もあります。
人によっては掛金を拠出せず、そのまま従来通りの給与として受け取ることも可能です。

ここまで、企業型DCの掛金についてご案内してきましたが、具体的にはどんな掛金設定がいいか、事例として以下2つの設定方法をご紹介致します。
掛金設定方法は様々なパターンがありますが、弊社では、お客様がどう設定していいかわからない場合には以下の2つのパターンをお勧めしています。
※なお、以下の掛金設定は会社補助の掛金(A)と社員の給与から切り出す掛金(B)がある選択制の企業型DCのうち、会社補助の掛金(A)の部分をどうするか、という掛金設定方法です。
1、社員区分別の一律固定
会社補助部分の掛金をシンプルに社員区分で一律固定にするパターンです。
正社員のみとすれば、例えば5,000円だったり、10,000円だったりと一律固定の掛金とします。
この会社補助部分の掛金に加えて、ご自身の給与からも任意で掛金を拠出できるようにします。例えば、会社補助で月10,000円、ご自身の給与からも月10,000円の掛金を拠出すると合計で毎月20,000円ずつ積立を行うイメージになります。
この方式はのメリットは何と言ってもシンプルさ。管理も非常に楽です。
デメリットとしては、個人で差をつけることができない点です。
2、役職や等級別に金額を設定する
上記よりはもう少し、人によって会社補助の金額を変えたい場合には、役職や等級別に金額を設定する方法があります。
例えば、以下のように管理職と一般社員でわける、というようなパターンや役職別で設定するようなイメージです。
【管理職と一般職で掛金を分けるパターン事例】
| 区分 | DC掛金(会社補助部分) |
| 管理職 | 20,000円 |
| 一般社員 | 5,000円 |
【役職別で掛金を分けるパターン事例】
| 区分 | DC掛金(会社補助部分) |
| 部長 | 20,000円 |
| 課長 | 15,000円 |
| 主任・係長 | 10,000円 |
| 一般社員(役職なし) | 5,000円 |
区分の分け方と掛金の金額設定は、掛金上限の範囲内であれば比較的自由に設定することが可能です。
社内で等級制度を運用している場合は、〇等級以上はいくら、といった設定をすることも可能です。
この方式のメリットは役職・職位・社内での等級などその人ごとの状況を掛金に反映できることにあります。
逆に1の固定方式と比較して管理をする手間は増える、ということになります。ただ、1の一律固定方式よりは若干メンテナンスや管理の手間はありますが、そこまで複雑ではありません。
毎年の昇格などの情報を踏まえて、掛金の変更を反映すればいいので、中小企業においても現実的にみても管理はできるレベルでしょう。
上記の他、設定方法としては基本給の〇%などの定率法による設定もできなくはありませんが、計算の手間がかかることや昇給の度に非常に管理工数もかかり、ミスの要因にも繋がるため、弊社ではあまりおすすめしておりません。

ここで1つ、「選択制DC」を導入する場合の、最低賃金との兼ね合いに関する注意をご案内いたします。
法令上、選択制DCを導入して、自分の給料から企業型DCの掛金として掛金を拠出する場合、その掛金は“賃金”には該当しません。
つまり、選択制で社員の給与から掛金を差し引いた場合、差し引き後の「賃金部分(基本給等)」が最低賃金を下回っていないかをきちんと確認する必要があります。
特に入社して間もない新卒の新入社員やパートタイム社員など、月給額が低い社員が選択制DCで掛金を拠出し過ぎると、最低賃金割れのリスクが生じる可能性があります。
例えば、とある最低賃金が時給1,226円だとすると、選択制DCの掛金を控除後の基本給等の金額を時間給換算した際にこの水準を下回ると、最低賃金法違反になることになります。
また、今までは基準を下回っていなかったものの、最低賃金が上昇することで最低賃金に抵触し、知らぬ間に違反状態になることも考えられます。
そのため、選択制DCでは給与から掛金を差し引いたあとの基本給等が、都道府県別の最低賃金を下回らないように設計し、運用する必要があります。
最近は毎年大幅に最低賃金が上昇していることもあり、この最低賃金への抵触は、選択制DCを導入する場合は注意が必要です。

掛け金の設定方法のイレギュラーな方法として、マッチング拠出というものがあります。
これは、企業が負担する掛け金の金額が、限度額に満たない場合、加入者(従業員)自身がさらに掛金を上乗せで拠出できるという制度です。
この制度を利用する場合の掛金は、企業が負担する掛金額の以下であり、企業の掛金額と合算した場合に上限額を超えないようにする必要があります。
※なお、選択制とマッチング拠出は異なる制度です。
いかがでしたでしょうか?
企業型DCは非常にメリットがある制度ですが、制度が複雑なこともあり、一度や二度こういった記事を読んでも、なかなか理解ができない部分もあるかと思います。
企業型確定拠出年金は、法改正により徐々に制度設計の柔軟性が増しています。
柔軟な設計ができるようになったのは良いことですが、その影響もあり制度や仕組みが非常に複雑になっているという面もあります。
弊社でも、自社でこの確定拠出年金制度を導入することになり、どんな掛け金設定にしようかと検討したときに、理解するのに時間がかかりました。
既存の制度やiDeCoとのすみ分けはどうなるのか?といったことや、選択制とマッチング拠出ではどちらがいいのか?
はたまた、掛け金設定の水準をどうしようか、など悩みは尽きません。
確定拠出年金制度の導入しようと検討されている企業様は、一人で悩まずにまずは、弊社にご相談下さい。
御社の状況に合わせて、伴走しながらベストなプランを一緒に考えて参ります。
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