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相談事例:業務委託を活用したい

【相談事例】業務委託者と雇用契約を使い分けて活用したい

相談者:会社経営者(社員数100人規模)

人事、労務の相談に迅速に対応していただける社労士の先生を探しております。

現在、業務委託者と雇用契約の線引きを明確にしたうえで、両者を有効に活用する計画を立てています。業務委託者が偽装請負にならないような適法の範囲で仕組みを作りたいのですが、給与/報酬体系や賃金規程の改訂など頭を痛めております。

グレーゾーンも多い部分かとは認識しているのですが、このグレーゾーンを如何にホワイトに近づけられるかを踏まえ、いろいろとご相談にのっていただきたいと考えております。

回答:社会保険労務士

業務委託はフリーランスや副業が増えてきた現在、まだ少ないものの、導入を検討する会社も増えてきました。

ご認識の通り、偽装請負にならないように、雇用契約で契約する労働者とは明確な線引きをする必要があります。

業務内容によっては、契約だけ業務委託になっているものの雇用契約で働く人同じような仕事をしている場合は、かなりブラック気味の制度になります。まずは、どの業務であれば業務委託が活用できそうか検討し業務委託者の線引きの落としどころを決めていきましょう。弊社が伴走してサポート致しますので、極力ホワイトな仕組みを構築していきましょう。

業務委託者を活用する際の注意点とポイント

業務委託者はフリーランス、請負労働者などという別名でも呼ばれることがありますが、副業が増えてきた最近増えてきた契約形態の1つとなります。

企業が業務委託者を効果的に活用するためには、まず業務委託と雇用契約(労働契約)との違いを理解しておく必要があります。

業務委託契約が適切であるかどうかの判断のポイントとしては、以下のようなものがあります。

  • 業務の遂行方法に関する指示、業務の遂行に関する評価等に係る指示、その他の管理を自ら行っているか?
    →会社が細かい指示を行っている場合は、雇用契約の色が強くなります。

     
  • 労働時間・残業・休日出勤に関する管理が行われ、報酬体系も雇用契約と同じように労働日数や労働時間によって決められているか?
    →これはわかりやすいポイントです。業務委託契約という名前であっても、アルバイトのように報酬形態が時給や日給で決められており、勤怠管理が労働者同様に行われている場合は雇用契約の色が強くなります。

     
  • 業務に要する機器、設備、資金等を自身で調達・用意しているか
    →例えば、事務作業をする人であれば、業務で使用するスマホやタブレット、パソコンなどや機材を会社から提供されているか?という点です。会社から提供を受けている場合は、雇用契約の労働者と同じ取扱いになりますので当然、雇用契約の色が強くなります。

 

上記のようなポイントで実態としては雇用契約であるが、契約上を業務委託契約にすることを偽装請負といいます。

グレーゾーンも多くわかりにくい点ではありますが、事例を踏まえてみていきましょう。

例えば、自社の給与計算業務を外部にアウトソーシングとして依頼したい、ということを考えたときに、外部の社労士事務所や税理士事務所、または給与計算アウトソース会社に依頼する場合は、わかりやすい業務委託契約になります。

この形態と比較し、知り合いの個人事業主に給与計算業務を依頼した場合、通常の社員同様に会社にきてその業務をやってもらい、なおかつ稼働時間で報酬を決めているようなやり方では業務委託契約の形式をとっていても、実質としては雇用契約と見なされ、偽装請負になる可能性が考えられます。

このように、業務委託者の活用を検討する場合には、まずはこの偽装請負にならないかどうかを注意し、本当に業務委託でいけるのかをチェックしていきます。

偽装請負のリスクとその予防策

では、偽装請負にならないような業務委託契約にするためのポイントとしては、先ほどのポイントを踏まえ業務を依頼する必要があります。

やはりまずは業務指示や勤務時間の管理を行わないことが重要です。業務委託者は独立した事業者であり、その立場を尊重する必要があります。

そのため、他の社員同様に労働時間や出勤日数を管理し勤怠管理を行うようなことは避ける必要があります。

逆に、そういった管理をしたいのであれば、業務委託契約はやめて通常の雇用契約での管理をするべきです。

業務委託契約書には業務の独立性や自己責任を明確に記載し、業務委託者が自己の裁量で業務を遂行できることを保証することが大切です。

大企業での導入事例:タニタ、電通など

大企業での業務委託の活用としては電通やタニタの事例が有名です。これらの企業が導入した手法は、従来雇用契約であった社員の人を「業務委託契約」へと切り替え、個人事業主化を行うというものです。

タニタではこのプロジェクトを「日本活性化プロジェクト」と名付け、実施を進めています。

社会保障や安定といった面でいえば、雇用契約の方が圧倒的に有利です。雇用契約であれば、労働基準法が適用され、残業や有給休暇もあり、怪我や病気をした場合は労災保険や健康保険を使うことができます。

一方で、個人事業主となった場合はこれらの保障が一気になくなることになります。今まで雇用契約として保護されていたことを考えると、明日から保険もなくなり、残業手当もでない、有給もない、という働き方はなかなかハードな契約形態と言えます。

一方で、人材市場において高スキルを有する高度な人材が個人事業主となると、自社以外の仕事も受注することができるようになり、それにより報酬(手取り)を高くすることができる魅力もあります。

副業者、ダブルワーカーの業務委託での取扱い

本業が別にある人が他の企業で副業として業務委託で仕事をするケースも徐々にではありますが増えてきています。

政府としても、副業を推進する立場にありますので、今後副業をやる人が増えると副業での業務委託者も増えていくことは考えられます。

業務委託契約では、雇用契約のように長期雇用を前提として自社でじっくりと時間をかけて育成をするよりも、既にある専門的なスキルを持つ人材がプロジェクト単位で仕事を受任するケースが多いと言えます。

企業側としても、雇用契約と業務委託それぞれの特性を理解しておきましょう。そのうえで、プロジェクトやアサインする業務の内容や期間、必要とするスキルに応じて、雇用契約による自社での内製化にした方がいいのか、または、外部の専門家に業務委託として外部委託するかを検討することとなります。

デジタル化やリモートワークの進展により、業務委託者の活用は今後さらに広がると予測されます。

コロナを機に地理的制約が少なくなり、テレワークが世間に浸透するとともに急速にクラウド系のサービスやプラットフォームがリリースされてきています。

ホワイトカラーの仕事の多くは、出社が業務遂行やクオリティを高める必須条件ではなくなってきています。

人材不足の時代の中、企業は競争力を高めるためにも、専門的なスキルを持つ業務委託者を適切に活用することが求められることになっていくでしょう。

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