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賃金規程・給与規程と給与計算の注意点

記事更新日:2024年9月20日

給与計算は、企業の経営において非常に重要な業務の一つです。

給与計算を間違ってしまうと、法令違反になることもあります。また、社員のモチベーションや企業の信頼性に直結するため、正確かつ公正に行うことが求められます。

しかし、給与計算における細かなルールは複雑で、特に就業規則での明確な取り決めがないと、残業代や手当、賞与などを巡って労使間のトラブルが発生することがあります。

本記事では、給与計算に関わる就業規則のポイントと注意点を解説し、適切な規定を設けるための基礎知識を提供します。

企業のご担当者様は本記事を参考に自社の就業規則、賃金規定の規定が適切に規定されているか、また、規定された通りに給与計算が実行されているかをチェックして下さい。

残業代、割増賃金に関する規定の注意点

やはりまずはこの残業代、割増賃金の部分があげられます。

給与計算において、残業計算は非常に重要なポイントです。

以下に、就業規則、賃金規程と残業代計算においてよくある間違いや落とし穴として4つポイントを紹介します。

 

(1)休日の規定と月平均所定労働時間

月給者の残業の計算には分子を月給の額とし分母に「月平均所定労働時間」で割って、時間単価を算出しますが、よくある間違いとして、就業規則で定めた休日の規定から算出された数値とは異なる数値を給与計算に使っている場合があることです。

月平均所定労働時間は正確には、以下の算式で算出します。

(暦日数ー年間休日数)÷12か月×1日所定労働時間

例えば、歴日数が閏年ではない365日の年で年間休日が120日、1日所定労働時間が8時間だとすると、以下のような計算となります。

(365日ー120日)÷12か月×8時間≒163時間

この計算をきちんと実施したうえで給与計算をしていれば問題ありませんが、異なる数値を利用して計算をしているケースもあります。

また、休日の規定として例えば「土曜、日曜、祝日」などのような定め方をしている場合、祝日の日数は毎年微妙に変化しますので、年間休日日数も毎年変わることになり、結果として「月平均所定労働時間」も変化することになります。

年間休日数が変化すること自体はいいのですが、その変化を給与計算に反映させることが必要になります。

もし、変化させるのが面倒なのであれば、就業規則に年間休日数を明記する方式にした方がいいです。一度、就業規則の規定と給与計算における残業の計算式を見直してみましょう。

 

(2)各種割増率の規定

残業代の計算では他にも、割増率の規定はポイントです。

法定基準としては法定時間外労働は月60時間までは割増25%、月60時間を超えた場合は割増50%という基準です。

この割増50%の規定は、中小企業においても2023年4月1日から適用されていますが、法改正の反映が未反映となっている場合は法令違反となります。

また、割増25%はあくまでも法定での時間外労働となる1日8時間を超える場合の割増率となります。

例えば、育児や介護での短時間勤務制度を利用している社員の人が1日8時間以内の「法定内残業」をした場合に、割増をするのかしないのか、といったことも規定で明記しておくべき事項です。割増率の規定もチェックしておきましょう。

 

(3)固定残業代の規定

固定残業代は、一定時間分の残業代を事前に固定給与に含めて支払う方式ですが、この制度を導入する際には就業規則において、どのような条件で固定残業代が支給されるのか、そのルールを明確に定めることが求められます。

例えば、固定残業代が何時間分の残業を含んでいるのかを明記し、それを超える残業時間には別途残業代を支払う必要があることを示す必要があります。

※時間数の明記は個別の雇用契約書に明記する方法もありますが、社員一律の設定時間を設けるような場合は就業規則に明記をすることが望ましいです。

固定残業代について全く記載がない状態で、よくわからない諸手当を残業代の意味合いとして支給している、というような曖昧で怪しい状態では、労働者とのトラブルのもとになり、場合によっては法令違反となります。

 

(4)歩合給の取扱い、残業代の計算

最後に4つ目のポイントが歩合給の取扱いです。歩合給は業績や成果に応じて支給される報酬形態ですが、毎月の月給として固定給に上乗せして支給する場合、この歩合給も残業代の算定基礎となります。

歩合給を導入している場合、基本給とは別に、残業代の計算を行う必要があります。

具体的には、歩合給制の場合は、歩合給の額をその月の総労働時間数で割って、1時間あたりの時間単価を計算します。

そのうえでこの時間単価に25%の割増率をかけて割増賃金を計算しますが、固定給と違うのは、掛け率が1.25ではなく0.25でいいということです。

・1時間あたりの歩合時間単価×0.25×残業時間=歩合給に関わる残業代

※上記の掛け率が1.25ではなく「0.25」でOKな理由としては、歩合給の場合、時間外労働に対する1時間あたりの基礎賃金(1.0の部分です)は既に歩合に含まれていると解釈されるため、支払うべき残業代は時間単価の125%ではなく、25%でOKとなります。

歩合を支給している会社の多くは固定給部分+歩合給部分が両方支給されることが多いため、残業代の計算を固定給部分と歩合給部分でそれぞれ実施することが必要です。

弊社の経験上、この歩合に関わる残業代計算はかなり忘れられることが多い、落とし穴の部分です。

 

上記であげた残業代計算の4つのポイントは未払い賃金に直結する部分です。

IPOやM&Aのタイミングで実施する労務DDでもよく指摘される重要ポイントでもありますので、自社の規定と給与計算をチェックしましょう。

 

諸手当の支給時期や返還規定について

諸手当(交通費、住宅手当、家族手当など)は、各社様々な支給がなされていますが、就業規則や賃金規程において、その支給方法のルールがあまり規定されていないケースもあります。

例えば、支給時期や手当の返還に関するルールについて就業規則、賃金規程で明確に定めていない場合で、以下のような状態になると給与計算時に悩みが生じます。

  • 役職者に役職手当を支給していたが、給与計算期間の途中で役職を変更し、支給対象の役職から外れることになった。
  • 家族手当を継続して支給していた社員について12月の年末調整の段階で扶養家族の変更の申告があった。詳しく聞いてみると、かなり前の4月の時点で配偶者と子が就職しており扶養から外れていた。(家族手当の過剰支給が後日発覚するパターン)
  • 通勤手当を6か月ごとの定期代として支給していたが、支給して直後、退職が決まった。

諸手当の規定については、支給基準、変更があった場合の取扱いや手当の返還を求める場合など、トラブルを未然に防ぐためにも、規定をしっかりと整備しておきましょう。

 

その他、上記以外での注意点

 ◇賞与の支給義務に関わる規定

賞与(ボーナス)は、労働基準法上で支給が義務付けられているものではありませんが、多くの企業で支給されています。

賞与の支給に関する就業規則の明確な規定がないと、労使間で誤解が生じることがあります。たとえば、「業績に基づく賞与」なのか、「一定の勤務年数に基づくもの」なのか、支給の条件や額について具体的に示す必要があります。

賞与は、労働基準法では即時に支給義務があるものではありますが、就業規則、賃金規程の規定の内容によっては支給義務が発生します。

これは例えば、賞与は夏季7月と冬季12月にそれぞれ基本給1か月分を支給する、といった給与同様に支給を約束する規定となっている場合は、支給義務が発生します。

 

◇人事評価の結果として降給を行う場合

人事評価に基づいて降給を行う場合、就業規則でその根拠や手続きを明確に定めておくことが重要です。

降給は労働者にとって大きな影響を与えるため、労働基準法や労働契約法に基づき、公平かつ適正な評価基準を設ける必要があります。

また、降給に至るまでのプロセスや、事前に労働者に対する警告や改善の機会を与えるかどうかも、規定として明示しておくと労使間のトラブルを防ぐことができます。

透明性の高い評価システムと賃金体系を構築する必要があります。

 

以上のように、就業規則、賃金規程の規定の定め方と給与計算は密接に関係があり、規定を整備することと、その規定の内容の通りに給与計算を実施することが求められます。

弊社では、就業規則の整備から給与計算の実務面での計算方法まで丁寧なアドバイス、サポートが可能です。

自社の給与計算に不安がある企業様や就業規則、賃金規程の整備をご検討されている企業様はぜひご相談下さい。

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