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※記事更新日:2024年3月9日
こんなお悩みありませんか?
就業規則の作成・変更のご相談を受けた際に、まず確認するのが社員の皆さんの契約形態や管理区分についてです。
このときに、通常のフルタイム働く正社員でもなく、パートタイムでもない管理区分である短時間正社員を作りたいという要望を頂くことが増えてきました。
ここでは、多様な働き方の一つとなる短時間正社員制度を導入する際のポイントをご説明いたします。
短時間正社員とは、フルタイムで働く正社員と比較して所定労働時間が短い社員のことを意味します。
法律上の定義はありませんが、次の項目を満たす社員のことを意味し、このページでもこれらの項目を満たす方を短時間正社員としてご案内いたします。
これまで正社員は、1日8時間・週5日勤務(週40時間勤務)といったフルタイム勤務を前提とされていました。
短時間正社員は、労働者を正社員として処遇しながら短時間の勤務を可能とすることで、労働力が不足し、多様な働き方が求められている今の時代にあった雇用形態として注目を集めはじめています。
まずは、何のために短時間正社員制度を導入するのかという目的と適用理由について考えてみると、次の3つのパターンが考えられます。
1、育児や介護を理由として短時間勤務をする
まずはじめに思い浮かぶのが育児や介護を理由として、短時間勤務制度を適用する場合です。
この両者は既に育児介護休業法によって、既に短時間勤務制度が法令で定められていますので、多くの会社で導入済であるものと考えられます。
もし、まだ規程されていなかったり、規程はされているものの何となく理解できていない場合は規程の内容を確認し、しっかり理解しておきましょう。
これは、法的に義務のある部分と、会社として任意で上乗せで作る制度の線引きをまずは理解しておく必要があるためです。
さて、法令での育児及び介護に関する短時間勤務制度は以下のような基準となっています。
(育児短時間勤務制度の基準)
(介護短時間勤務制度の基準)
上記の法令の基準を超えた部分に適用ができる制度を考える、というのが1つあります。
どこまで適用拡大を行うかについては各社検討する部分となります。
2、正社員だった人が心身の疾病など育児や介護以外の理由で短時間勤務をする
このパターンは、例えば心身の不調により休職をしていた方が復帰する場合に、いきなりフルタイムは厳しいので短時間勤務で復帰するような場合です。
所定労働時間は変えずに、遅刻早退扱いで処理することも可能ですが、基本的に正社員はフルタイム勤務することが前提の雇用形態となります。
本人の体調面なども考慮し、所定労働時間を短くして勤務してもらうことも一つの手段となります。
3、パートタイムだった人がそのままの勤務時間で無期雇用に転換する
このページをご覧になっている方はこういった場合で活用したい方も多いのではないでしょうか。
勤務年数の長いベテランのパートタイム社員は、仕事にも習熟し、職務能力も高く、企業としては貴重な戦力です。
このような優秀なスタッフを囲い込むために、まずは正社員登用というキャリアアップを考えるのですが、ご本人の事情によっては、残業ができなかったり、所定労働時間が長くなるのは厳しいといった方もいらっしゃいます。
そのような方々のキャリアアップの一つとして短時間正社員という道を用意することが考えられます。
雇用契約期間に定めがある労働契約の更新を繰り返し、通算契約期間が5年を超えたときには、労働者からの申込みにより自動的に期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換されるルール(これを無期転換ルールといいます)があります。
パートタイマーから短時間正社員へ転換する人のことを考える際には、この無期転換ルールも合わせて理解しておきましょう。
契約期間が5年を超えた非正規社員の方の処遇をどのようにしていくのか?
これらの人に正社員との待遇差がある場合には、同一労働同一賃金の問題もあります。
短時間正社員制度と合わせて、無期転換ルールやこの無期に転換した社員の処遇についても検討しましょう。
短時間正社員制度を導入するメリットはいくつかあります、弊社が実務を通して感じるのは、やはり社員のモチベーションアップと定着率向上、があげられます。
短時間正社員制度があれば、パートタイムや契約社員の人にも多様なキャリアプランを提示することができます。
正社員の人にとっても、近年叫ばれるワークライフバランスを重要視する人にとっては、フルタイムよりも短時間正社員の方がいい人もいるでしょう。
短時間正社員制度がなければ、今までは労働時間を減らす場合の受け皿は概ね「パートタイマー」になるという選択肢でした。
こうなると、正社員からパートタイマーになることを心理的に嫌がる人もいますし、待遇としても賞与や退職金といったもので大きく低下するため、モチベーションがダウンしていました。
短時間正社員はこのような問題を解決する手段の一つとして考えられます。
1、パートタイム、契約社員とのすみわけ
弊所で実際に短時間正社員制度の制度設計、コンサルティングを実施していても、この部分が一番課題になります。社員の管理区分が増えれば、それだけ複雑化していきます。
短時間正社員とは何者なのか?その定義や要件を明確にする必要がありますが、その際、6時間や5時間などで勤務するパートタイムや契約社員と何が違うのか?ということが問題になります。
2、短時間正社員とパートタイマーとの同一労働同一賃金の問題
上記の棲み分けにも関係するのが、最近よく耳にするようになってきた同一労働同一賃金の問題です。
例えば、以下の2人の社員の方がいたとします。
この2人の労働者が同じ仕事をしていたとします。
そして、短時間正社員の方には退職金や賞与が正社員と同じように支給され、一方でパートタイマーの方は対象外であったとします。
そうなると、勤務時間も同じ、仕事も同じパートタイマーの方にとっては、「この差は何?なぜ私は短時間正社員ではないの?」という不平不満が発生します。
3、残業の要求がし難くなる
短時間正社員を望む人は、何らかの理由でフルタイム働くことができない人です。当然ながら、残業は(ほぼ)できない人と考えていいでしょう。
例えば、今まで残業バリバリでエース級の働きをしていた正社員の人が何らかの理由で短時間勤務以外であれば離職せざるをいないような状況になったとします。
多様な働き方を推進していくためにも、会社が短時間正社員制度を導入した場合、この社員には当然今までのように残業を命じることが厳しくなります。
当然、残業時間は少ない方がいいですが、急に減るものでもありません。
短時間正社員制度の導入を検討される企業では、自社の残業時間の分析や生産性の向上といった面への取り組みも合わせて実施することをお勧めします。
短時間正社員制度の導入と合わせて、既存社員の働き方改革も並行して推進することができれば、より良い職場環境を実現することができます。
同一労働同一賃金のガイドラインにもあるように、短時間正社員の待遇で検討すべき項目は次の3点といえます。
短時間「正社員」というように、正社員という名称を付けるぐらいなので、基本的には待遇の多くは正社員と同等とする方が社員のモチベーションにはなりますが、労働時間が通常の正社員よりも短いという事実もあります。
基本給は勤務する所定労働時間による案分、手当はその支給名目によりけり、福利厚生は正社員と同じ扱い、とするのが大きな流れです。
さて、短時間正社員制度のイメージがついてきたところで、弊所が制度設計のサポートをした導入事例をご紹介させて頂きます。
1、在宅勤務者がいる会社での事例
こちらの企業では、パートタイムで勤務していた方が優秀であったために、パートタイムの次のキャリアの道を作ってあげたいという経営者様の要望がありました。
パートスタッフの方の状況では、フルタイムの勤務時間にすることは難しく、働く時間は今のままが希望に合っているということで、短時間正社員制度の導入を致しました。
2、工場でのベテラン社員を短時間勤務社員として処遇した事例
古い就業規則をリニューアルしようとしていたタイミングで弊所に依頼されたこちらの企業では、アバウトな労務管理の結果、社員の中で勤務時間が異なる社員が点在しておりました。
そこで、まずは社員区分を明確にし、現在いる社員の方を新しく振り分けていった結果、ベテランの社員の方が通常の正社員よりも勤務時間が短いために「パートタイム」の区分になってしまうという状況がでてきました。
本人としては正社員のつもりで勤務しており、会社としても正社員のつもりであったため、パートタイムにはしたくない、という要望があり、そこで短時間正社員制度の導入を実施致しました。
さて、ここまで短時間正社員制度のポイントや実際の導入事例についてご説明してきました。
短時間正社員制度はメリットもあるものの、労務管理が複雑になるというデメリットもあり、また、導入するためにきちんと検討した上で制度を作らないと、公平性に欠ける変なルールになりかねません。
加えて、これからは社員区分ごとに待遇差をつける規則は同一労働同一賃金の問題にも目を光らせながら制度設計をし、ガイドラインの改定に合わせて、適宜規則も変えていく必要もでてきます。
つまり、通常の正社員用の就業規則を作成するよりも、注意するべき点も多く難しいと言えます。
こういったことでお悩みの方は、ぜひ一度ご相談下さい。
千代田区神保町の弊社にお越し頂ければ、就業規則の無料相談会も実施しております。
古い就業規則がある方、まだ何も就業規則がない方、自分で作成してみたけど何だかしっくりこない方、いずれの場合でも対応させて頂きます。
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