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記事更新日:2024年6月5日
労働協約という言葉自体があまり耳慣れない言葉だと思います。まずはこの労働協約についてご説明致します。
労働協約とは、労働組合と会社(使用者)との間で労働組合に加入している組合員の賃金、労働時間をはじめとした労働条件に関する事項について合意した事項を書面にしてまとめたものになります。
そのため、労働協約が関係していくるのは労働組合がある会社(もしくは外部の労働組合が関係している会社)に限られます。
労働協約の要件としては、書面で会社と労働組合双方が署名又は記名押印したものをいいます。
名称が労働協約になっていなくても、覚書や確認書などでも労働協約となります。
ここで大事なのが、労働協約は、労働者と会社(使用者)が個別に結ぶ労働契約や会社が定める就業規則よりも、優先して適用されるという点です。
つまり、就業規則や個別の労働契約よりも「強い」効力をもっています。
まとめると、労働協約、就業規則、個別の労働協約の優先度を示すと以下のようになります。
この図の示す通り、労働組合がある会社ではこの労働協約の存在が非常に重要になってくるのがわかります。
労働協約に定めるものは、主に労働条件その他労使関係全般に関する事項となります。
法令や公序良俗に反しない限り、その内容をどのように決めるかは当事者の自由となります。
労働協約の内容を大きく分類すると、賃金、労働時間、休日・休暇など労働者の待遇についての基準を定める部分と、組合活動に関すること、団体交渉の手続きなどのように労働組合と使用者との関係について定める部分に分けられます。
具体的には次のような事項が考えられます。
1、労働者の待遇についての基準を定める部分の例
2、労働組合と使用者との関係を定める部分の例
なお、労働協約には有効期間を定める場合と定めない場合があります。
有効期間を定める場合は、3年を超えることはできません。たとえ3年を超える期間を定めても、3年の有効期間を定めたものとみなされます。
有効期間を定めない協約の場合は、一方が署名又は記名押印した文書により、相手方に90日以上前に予告して解約することができます。
なお、有効期間の定めがある場合でも、労使双方の合意があれば、有効期間中であっても解約することができます。
労働協約は労働組合と約束した文書ですが、ここで労働組合の種類にも解説していきます。
企業内にある労働組合はその組織構成によって社員全員が加入するユニオンショップと希望者のみが加入しているオープンショップという2つがあります。
ユニオンショップとは、雇用された社員は労働組合への加入が義務付けられており、組合をやめると同時に会社も解雇となる制度です。そのため、社員は全員加入していることになります。
一方、オープンショップとは、雇用と労働組合への加入がリンクしておらず、労働組合に入るかどうかは、社員自身が選択できる制度です。
就業規則の改定や作成、労働条件の変更を会社が考えた場合に、この両者の違いは大きな違いになります。
会社が頭を悩ませる労働条件の不利益変更を考えてみます。
ユニオンショップの会社で労働協約を締結した場合、締結した労働組合に加入している組合員全員に適用され、効果が生まれます。
そのため、社員全員が組合員であるユニオンショップでは労働組合との労働協約を締結することで全ての社員に新しい制度を適用することができます。
しかし、社員全員が加入していないオープンショップの場合、労働組合と合意ができて労働協約を締結したとしてもその効果が及ぶのはあくまでもその労働組合に加入している組合員に限定され、加入していない非組合員に対して効力が及ぶものではありません。
そのため、非組合員に対しては、個別の同意を得る必要がでてきます。
このように、ユニオンショップとオープンショップでは就業規則を検討する際に、進めていく手順やアプローチの方法がかなり変わることになります。
労働協約は労働組合と約束した文書ですが、ここ最近の労働組合の推定組織率※は年々下がってきており、以下のグラフのように、2022年では16.5%となっています。
※推定組織率とは、雇用者数に占める労働組合員数の割合
【労働組合の推定組織率の推移】
※厚生労働省「労働組合基礎調査」資料からのデータをもとに作成。
労働組合は年功序列型賃金などと合わせて、長らく日本型経営の特徴の1つでありましたが、資料が示す通り、労働組合に加入している人は最近では2割にも満たないような状況です。
弊社クライアントの状況をみても、労働組合がある企業様は社歴の長い老舗企業であり、創業間もない企業にはやはり労働組合はありません。
そういったこともあり、労働協約というもの自体に、触れたことも見たこともない方が多いのかと思います。
企業の人事担当者や労務担当者が転職し、初めて労働組合のある企業に入社された場合は、労働組合法や労働協約といったものの理解を深めておく必要があります。
労働組合の組合員に対する労働条件変更(不利益変更)については、労働組合と会社との間での合意文書である「労働協約」が締結された場合には、原則として当事者となる労働組合の組合員にその効力が及ぶことになります。
※ただし、殊更一部の組合員をターゲットにした不利益変更の場合には労働組合の趣旨から協約自体の無効とみなされる可能性があります。
また、この労働協約が当該事業場の同種の労働者の4分の3以上で構成されている多数派の労働組合が締結したものであれば「他の同種の労働者」に対してもその不利益な内容が及ぶこととされる例外措置もあります。
なお、この4分の3要件を満たさず、多数派の労働組合とのみ合意し、その他の労働者に新制度を拡張適用した不利益変更の事例で労働協約と就業規則の変更は無効とされた最高裁判例もあります。
一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。
労働組合がある会社で就業規則の変更を行う際に、企業側が陥る失敗事例、リスクについてもみていきたいと思います。
1、古い労働協約の存在を忘れており、その労働協約の内容と就業規則の内容が一致しないパターン
この場合、就業規則の基準と労働協約の基準を比べ、労働協約の基準の方がいい待遇、条件であった場合、合意があったとしても就業規則や労働契約書の内容は無効となります。
労働協約の中には、有効期間の定めがないものも存在しており、ずっと生きたままのルール、条件もあるわけです。
労働協約は、企業経営上、非常に重要な書類なのですが、中小企業では昔作成してからほったらかしになっている会社もあります。
古い内容のままの労働協約が実態とは違う、といった場合はその内容を廃止する内容の労働協約を新たに結んでおく必要があります。
この点は、会社もあまり内容を把握していない労働協約があったりしますので、労働組合がある会社で労働条件を変更する場合には、過去の労働協約の内容を確認する必要があります。
2、オープンショップの労働組合で労働協約のみ締結して労働条件変更を実施するパターン
この場合、主に問題となるのが、労働組合に加入していない非組合員への取扱いです。
3/4要件をクリアしていない場合は当然として、非組合員には労働協約の効果は及びませんので個別の合意が必要になってしまいます。
この個別合意を得ずに強引に新制度への転換を実施した場合、大きなトラブルが発生するリスクを抱えることになります。
また、3/4要件をクリアしていたとしても、トラブルの予防という観点では個別に合意を得ておくことをお勧めいたします。
以上を踏まえ、企業内に労働組合がある会社において就業規則を改定する場合(特に、労働条件の不利益変更の場合)は、以下のステップにて進めることがベストとなります。
ステップの3、4、5は同時並行的に進めていくことも考えられますが、重要なのは、3組合と合意ができている(新制度について労働協約が締結できている)、4就業規則を社員に周知している、5なおかつ社員とも個別の合意が得られている、という状況を作ることです。
お困りの方はお気軽にご連絡ください。企業の状況に合わせた最もふさわしい解決策を一緒に考えさせていただきます。
このページを読んで注意点がわかり、ご自身で勉強しても、なかなかわからない点も多いかと思います。
就業規則や労働協約の改定について不安がある場合は専門家へご相談することをお勧めします。
当社、コントリビュート社会保険労務士法人でも、労働組合のあるお客様への就業規則の改定業務も多数経験がございます。
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